大転換 第11部 恋愛が変わる1

 東京都品川区の区施設に20~40代の男女約40人が集まった。「無理に相手に合わせて結婚しても後が続かない」「話し好きじゃない人はそれでも平気な人を探そう」―。結婚コンサルタントが、男女交際の秘訣(ひけつ)を伝授する。区が今秋、主催した“婚活セミナー”のひとこまだ。 

 都会の真ん中でも恋は至難の業。「仕事は3交代で食事の時間もゆっくりとれず出会いがない」(35歳男性為替ディーラー)、「職場では、なかなか恋愛モードにならなくて」(27歳女性会社員)。それでも講習を受けた男女はパーティーに参加、にわかカップルが2次会に向かった。

 婚活支援について浜野健(はまの・たけし)品川区長は「おせっかいかもしれないが人間を結び付ける役割を行政が担いたい」と強調する。「何でもメールや電話になり生身の人間が交流する機会が少なくなった。人との関係が砂粒のような社会になっている」。

 国は、2009年度補正予算で“婚活”を初めて予算化した。都道府県に配分する「地域子育て創生事業」502億円の用途の一つに「結婚意欲を持った若者の出会いの場の提供や結婚相談員の配置」と明記したのだ。

 厚生労働省は02年にも、少子化対策として市町村の「出会い事業」への補助を検討したことがあったが「個人の選択に税金を使うな」など国民からの抗議が相次ぎ、見送った経緯がある。しかし今回は反発は「まったくない」という。

 共同通信の調べでは、今秋までに婚活支援事業を実施している都道府県は全国の6割近い27府県。少ないところは年間十数万円程度の規模だが、茨城県は年間約2100万円の予算を計上。お見合いイベントなどを積極的に後押しし、06年からの参加者は延べ9千人近く、351組が結婚した力の入れようだ。  

 石川県は05年度から「縁結びist(えんむすびすと)」として、世話好きな地域の人々に個人情報保護などの講習を受

おせっかいかもしれないが

少子化にらみ国も予算化

東京都品川区で行われた同区主催の“婚活セミナー”で、男女交際の秘訣を伝授する結婚コンサルタント(共同)

けてもらい、県お墨付きの仲人を養成している。県出資の財団で約300人を登録し、結婚を望む人の情報や独自のつてを持ち寄ってお見合いを設定。120組の結婚にこぎ着けた。「子どもが生まれた後の対策をとるより、まず結婚させないと」と縁結びistの一人、金沢市の吉田千代喜(よしだ・ちよき)さん(77)は少子化対策の決め手は結婚支援と強調する。

 和歌山県田辺市で、市や地元JAが繰り広げた婚活が実った。一昨年始まった事業にはこれまで男性36人と女性43人が参加。すでに3組が結婚し、田辺市は「予想以上の成果」と喜ぶ。 

 行政の婚活は「安心感がある」「費用が安い」などおおむね好評という。橋爪大三郎(はしづめ・だいさぶろう)東工大教授(社会学)は「婚活が市民権を得た」とした上で、少子化対策として「将来、払うコストが減るなら今、多少の税金を使っても仕方ないと考える人が増えた」と分析する。しかし疑問は消えない。「結婚は個人の自由のはず。行政が介入するのは慎重であるべきでは」。

情報交換しあう仲人役の「縁結びist」たち。右端が吉田千代喜さん=金沢市(共同)

 個人が出会い、新しい家族をつくるきっかけともなる“恋愛”の姿が変わりつつある。婚活に参入する行政や企業、さまざまな壁を超える恋…。21世紀の恋愛の姿を追った。(尾原佐和子共同通信記者)


第1部 世界が変わる
第2部 生き方が変わる
第3部 日本人が変わる
第4部 資本主義が変わる
第5部 老いが変わる
第6部 働き方が変わる
①迷走する金融資本主義 ①見えてきた「生存」 ①ペンキ塗りの技伝える ①通貨暴落、住宅ローン倍に ①97歳の「出張授業」 ①海に生きる
②オバマに託す夢 ②「貧乏」を逆手に ②安い労働力、国外に求め ②「反資本主義」広がる支持 ②ボランティアで症状緩和 ②半農半X
③変革の裏側で ③女たちのルネサンス ③銀座に香港の「寿司王」 ③モノあふれ、価値観激変 ③バリアだらけで自立促す ③障害者の就労
④過熱した美術市場 ④「障害」を見つめる ④国籍捨て政治家目指す ④低価格車に誇り抱く ④ふれあう「命」支える ④派遣を超える
⑤砂漠の技術者 ⑤農村が都会動かす ⑤言葉の壁越え高校合格 ⑤大学起点に企業集団 ⑤技術が補う身体機能 ⑤面白法人でいく
⑥サムライ流多元主義 ⑥リアルを求めて ⑥ニューカマーが示す未来 ⑥目標捨てず、驚異の回復 ⑥山に生きる
⑦気付けば少数“先住民”
第7部 食が変わる
第8部 感覚が変わる
第9部 まつりごとが変わる
第10部 リサイクルが変わる
第11部 恋愛が変わる
第12部 権利が変わる
①中国ネット企業が養豚参入 ①体験と結び付き記憶に ①旋風過ぎ、残る重圧感 ①下水道から黄金取り出せ ①おせっかいかもしれないが ①裁判が認めた風景の価値
②資源も収入も減る一方 ②体震わす文脈なき歌詞 ②ネット選挙“加速”へ ②バイオ燃料、起点に循環 ②トラブル避けて出会い模索 ②納得して死んでいきたい
③「いただく」を実感 ③体との境界あいまいに ③投票率上がれ、学生奮起 ③鉱山技術で資源回収 ③わが子思い仲介に奔走 ③機関投資家の責任重く
④実態伝えぬ自給率 ④心の在りかの謎が再燃 ④初めて棄権、次は民主も ④大打撃の中古車ビジネス ④「光の出会い」幸せつかむ ④国際化の波、家族観にも
⑤捨てない努力が根付く ⑤想像し、深く感じ取る ⑤共感力失い政権転落 ⑤古民家を離島体験の拠点に ⑤彼女は画面に映るキャラ ⑤吹き荒れる逆風、でも…
⑥1日300錠の“食事” ⑥本をちゃんと届けたい ⑥性を超え、結婚を超えて ⑥“自主カメラ”急増中
⑦栄養の謎に挑む研究者 ⑦長距離ドライブを相乗り