単行本、新書、文庫…。毎日、平均200点以上の新刊が出され続け、多くの本は読者の手に渡ることなく消えていく。本の流通の無駄を見直す取り組みや、本を共有する仕組み「ブックシェア」が動きだした。
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製紙会社がひしめく静岡県富士市。再生紙メーカー「丸王製紙」の倉庫に週刊誌などが積み上げられていく。書店などで売れ残り返品された雑誌を大手出版社から毎月数百トン仕入れ、新聞古紙などと配合し、漫画誌用の印刷紙「ザラ紙」として再生、出荷している。
版元からの定期的な納入が始まったのは昨年秋。「中国への輸出急増などで古紙原料の調達に悩んでいただけに、ありがたい」と丸王製紙の担当者。出版社側にも「返品がなくならない以上、できるだけ有効利用をしたい」との事情がある。
有効利用とは何か―。1年に出回る書籍と雑誌は50億冊に上るともされる。昨年の書籍の出版点数が95年の水準から2割以上増える一方で、販売金額は前年割れ、返品率は40%を超える。需給の不均衡が生みだすのは膨大な「無駄」だ。書店や出版社の経営が厳しさを増す今、業界ではこの言葉の重みが増している。


「値引き販売ができない再版制と、書店が返品リスクを負わない委託販売制は限界に来ている。業界全体のためにも変革が急務」。危機感を強めた筑摩書房の菊池明郎(きくち・あきお)社長(62)を中心に中堅出版社8社が7月、新たな共同販売システム「35(さんごー)ブックス」を立ち上げた。
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菊池社長らが目指すのは、「書店の仕入れ意欲と能力の向上」だ。供給側が主導権を持つ現在の流通システムでは、書店は「取次会社から来た商品をただ並べ、売れ残ったら返品すればいい」と安易に考えがち。「結果として出版界は読者とのつながりを欠いてきた」との反省がにじむ。
書店の取り分を増やす代わりに、返品コストも負担してもらう「35―」は、つまり「責任販売」。もっとも、受注状況は予想を下回り、「まだ高い壁がある」(菊池社長)状態だが、書店側にも「目指す方向は正しく、今後、責任販売は広がっていくのでは」(丸善)と理解は広がりつつある。
「太宰治は読んでほしいな」。10月の週末、札幌市厚別区の中学校の空き教室で市民団体の「北海道ブックシェアリング」のメンバーが、中学生に提供する文庫を談笑しながら品定めしていた。
書棚に児童書などが整然と並び、図書館と見まがうこの空間は、同団体が家庭などで不要になった本をただで譲り受け、図書の不足や劣化に悩む施設などへ無償提供するための拠点だ。
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昨年1月の活動開始以来、6万冊が集まり、計約1万2千冊を提供。代表の出版社経営、荒井宏明(あらい・ひろあき)さん(46)は「一方的に送るだけではもらった人たちの満足度が低い場合が多い。モノのやりとりの楽しさも必要なんですよ」として、希望者に直接本を選んでもらう方法にこだわる。
今年5月に約100冊を譲り受けた札幌市手稲老人福祉センターの小圷章(こあくつ・あきら)館長(55)は「本好き同士がつながることで、本に新たな命が吹き込まれるのを実感した」と満足げだ。予算の削減で蔵書の更新もままならない学校などが増えており、「僕自身、公民館などに置かれた本を夢中で読んで育った。その恩返しという気持ちかな」と荒井さんは意気込む。
人々の本への愛情が本の無駄を減らす。そして、「必要としている人に本をちゃんと届ける」という試みが、出版界でもようやく緒に就いた。(瀬野木作共同通信記者)


