ロシア最大の日本製中古車の輸入港であるウラジオストク。中古車ビジネスが最大の産業とされるこの地域で、失業や倒産が相次いでいる。
ロシア政府が国内の自動車産業を保護するため、輸入車への関税率を1月から引き上げ、中古車輸入が激減したためだ。ロシア極東沿海地方での日本製中古車の再利用は危機に直面している。
![]()
「日本製の中古車ビジネスが繁栄した時代はもう終わったよ」。ウラジオストクで10年以上自動車販売業を営むイーゴリ・リャフタ社長(42)が力なくつぶやいた。昨年は平均で月間300台だった販売台数が、今年は同30台に激減したという。
1~8月に日本からロシアに輸出された自動車台数は前年同期に比べ約90%減と大きく落ち込んだ。ロシア極東の主要都市では、欧米メーカーの車も目立つ首都モスクワなどと違い、走っている車のほとんどは日本製の中古車だ。
リャフタ社長によると、関税引き上げに加え、昨年秋からの金融危機、円高ルーブル安が追い打ちをかけ、日本製中古車の市中価格は30~60%上昇。ブランド、性能、デザインとあらゆる面で人気の高かった日本製中古車も、庶民の手から遠のいた。
ウラジオストク港を遠く見下ろす丘陵地に「ゼリョーニイ・ウーゴル(緑の街角)」と呼ばれる広大な中古車販売場がある。
好況時はずらりと1万台は並んだが、現在は4千台ほど。購入客はまばらで、手持ちぶさたな販売業者ばかり目立つ。
ここで昨年12月まで8年間、中古車を販売してきたイリヤさん(37)は関税引き上げを機にタクシー運転手に転職した。「車は人に幸せをもたらす。関税引き上げは極東の暮らし


をつぶすだけだ」と政府を強く批判する。
![]()
ウラジオストクはソ連時代、「軍事閉鎖都市」として外国人の立ち入りが厳しく制限されていた。ソ連崩壊後に育った最大の産業が日本からの中古車関連ビジネスといわれる。約60万人の人口のうち約10万人が輸入販売、輸送、修理、部品、洗車など何らかの自動車ビジネスに従事していたとされる。しかし関税引き上げ後は離職者が増えている。
さらにロシア政府は、来年9月から右ハンドルの日本車の輸入を事実上禁止する技術規格を導入しようとしている。左ハンドルの欧米車の輸入はこれまで通り認められる。「車が右側通行のロシアで、右ハンドル車は事故を誘発し危険だ」
というのが理由の一つだが、合理的な根拠は乏しい。保護主義的な規制であり、「ロシアが世界貿易機関(WTO)に加盟していれば間違いなく提訴される」(日本政府筋)との見方もある。
右ハンドル車規制の背景には、ロシア国内の自動車産業による「日本車排除」のロビー活動があるとささやかれている。日本側関係者の間では「欧米メーカーも日本からの輸入車をロシアから追い出す絶好の機会ととらえているだろう」との警戒感が広がっている。
ロシアで中古車ビジネスにかかわっている日本人の実業家は「右ハンドル車が禁止されれば息の根を止められる。自動車以外の商品の扱いを増やしていくしかない」と覚悟している。(平林倫共同通信記者)


