大転換 第10部 食が変わる3

 十和田湖に面し、かつて鉱山で栄えた秋田県北東部の小坂町。DOWAホールディングス系の「小坂製錬」には、廃棄されたパソコンから取り出した電子基板がぎっしり詰まった巨大な袋が並ぶ。 

 炉に送り込まれたリサイクル原料は、1300度を超える高温で熱せられ、銅などを含む真っ赤に溶けた金属が勢いよく流れ落ちる。

 小坂製錬は、鉱山で培った製錬技術を生かし、使用済みの電子機器などから金属を回収する事業を拡大している。採算悪化で隣接する鉱山は約20年前に閉山。原料の大半を鉱石からリサイクル原料に切り替えた。

 廃棄された家電製品や携帯電話は「都市鉱山」と呼ばれる。中国など新興国を相手に世界各地で資源獲得を競う日本企業にとって、金や銀、液晶などに使われるレアメタル(希少金属)のインジウムなどが含まれる都市鉱山は身近にある「宝の山」だ。 

 「資源ナショナリズムが世界的に広がり、日本は苦戦している。リサイクルの拡大は当然の流れだ」(小坂製錬の矢内康晴(やない・やすはる)総務部長)。廃棄された携帯電話からは、1トン当たり約250グラムの金が取り出せる。鉱石よりも回収率が高いのが魅力という。

 福井県敦賀市の「日鉱敦賀リサイクル」には携帯電話、コピー機、パソコンといった使用済みの電子機器などが次々運ばれてくる。携帯電話などはいったん焼却され、金や銀などの資源を抽出するため、大分市にある日鉱金属グループの製錬所に移される。

 物質・材料研究機構(茨城県つくば市)は「日本の都市鉱 山は世界有数の資源国に匹敵する規模だ」と推定している。

同機構の試算では、金は約6800トンと世界の埋蔵量の約

小坂製錬でリサイクルに使われるパソコンなどの電子部品=秋田県小坂町(共同)

鉱山技術で資源回収

身近にある「宝の山」

小坂製錬でリサイクルに使われるパソコンの電子基板=秋田県小坂町(共同)

16%、銀は約6万トンと約22%を占める。インジウムも約16%に上る。日本が海外で集めてきた資源が都市鉱山に眠っている。 

 国立環境研究所の寺園淳(てらぞの・あつし)室長は、2005年度に日本から海外に輸出された中古家電の量を460万台と推計した。経済成長が続く中国や、リサイクルのコストが安いフィリピンなどに持ち込まれる家電製品も多い。 

 携帯電話の場合、国内での回収作業はそう簡単ではない。民間団体の推計では、00年度に1361万台だったリサイクル台数は08年度には617万台に減少した。機種変更後も写真やメールを思い出として残したり、携帯電話に記憶させた個人情報の漏えいを心配する利用者が少なくないためとされる。 

 携帯電話1台当たりの金属の価値は100円程度という。資源リサイクルを軌道に乗せるには、大量に集める必要がある。 

 小坂町に隣接する秋田県大館市は企業などと協力し、市役所や市内のスーパーに回収ボックスを置いた。携帯電話やリモコン、アダプターなどが集まっている。 

 大館市も鉱山で栄えた歴史を持つ。市の担当者は「市民の金属資源に対する関心は高い」という。経済産業省は「携

日鉱敦賀リサイクルに集められた使用済みの携帯電話=福井県敦賀市 (共同)

帯を頻繁に買い替える若者層の動きが鍵になる」とみている。

 大ヒット中のハイブリッド車やこれから登場する電気自動車も、将来は再利用の対象になる。ハイブリッド車のニッケル水素電池は、パソコンやビデオカメラ用の電池とはけた違いの大きさだ。 

 「リサイクルが資源小国を支える日がいずれやってくる」。トヨタ自動車首脳は近未来の産業をこう予想している。(小林輝彦共同通信記者)


第1部 世界が変わる
第2部 生き方が変わる
第3部 日本人が変わる
第4部 資本主義が変わる
第5部 老いが変わる
第6部 働き方が変わる
①迷走する金融資本主義 ①見えてきた「生存」 ①ペンキ塗りの技伝える ①通貨暴落、住宅ローン倍に ①97歳の「出張授業」 ①海に生きる
②オバマに託す夢 ②「貧乏」を逆手に ②安い労働力、国外に求め ②「反資本主義」広がる支持 ②ボランティアで症状緩和 ②半農半X
③変革の裏側で ③女たちのルネサンス ③銀座に香港の「寿司王」 ③モノあふれ、価値観激変 ③バリアだらけで自立促す ③障害者の就労
④過熱した美術市場 ④「障害」を見つめる ④国籍捨て政治家目指す ④低価格車に誇り抱く ④ふれあう「命」支える ④派遣を超える
⑤砂漠の技術者 ⑤農村が都会動かす ⑤言葉の壁越え高校合格 ⑤大学起点に企業集団 ⑤技術が補う身体機能 ⑤面白法人でいく
⑥サムライ流多元主義 ⑥リアルを求めて ⑥ニューカマーが示す未来 ⑥目標捨てず、驚異の回復 ⑥山に生きる
⑦気付けば少数“先住民”
第7部 食が変わる
第8部 感覚が変わる
第9部 まつりごとが変わる
第10部 リサイクルが変わる
第11部 恋愛が変わる
第12部 権利が変わる
①中国ネット企業が養豚参入 ①体験と結び付き記憶に ①旋風過ぎ、残る重圧感 ①下水道から黄金取り出せ ①おせっかいかもしれないが ①裁判が認めた風景の価値
②資源も収入も減る一方 ②体震わす文脈なき歌詞 ②ネット選挙“加速”へ ②バイオ燃料、起点に循環 ②トラブル避けて出会い模索 ②納得して死んでいきたい
③「いただく」を実感 ③体との境界あいまいに ③投票率上がれ、学生奮起 ③鉱山技術で資源回収 ③わが子思い仲介に奔走 ③機関投資家の責任重く
④実態伝えぬ自給率 ④心の在りかの謎が再燃 ④初めて棄権、次は民主も ④大打撃の中古車ビジネス ④「光の出会い」幸せつかむ ④国際化の波、家族観にも
⑤捨てない努力が根付く ⑤想像し、深く感じ取る ⑤共感力失い政権転落 ⑤古民家を離島体験の拠点に ⑤彼女は画面に映るキャラ ⑤吹き荒れる逆風、でも…
⑥1日300錠の“食事” ⑥本をちゃんと届けたい ⑥性を超え、結婚を超えて ⑥“自主カメラ”急増中
⑦栄養の謎に挑む研究者 ⑦長距離ドライブを相乗り