街が生み出す汚れを集める下水道。汚泥の中に含まれる金などの鉱物、そして生物に必須の元素、リンの回収に各地の自治体が力を入れている。天然資源の高騰や環境意識の高まりの中、下水道を流れる“富”がひそかに注目を集めている。
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ワカサギ釣りで有名な長野県・諏訪湖の湖畔には、白い建物と卵形のタンクがずらりと並ぶ。諏訪市と周辺5市町村に住む18万8千人の生活排水を処理する豊田終末処理場だ。
「この煙突にこびり付く灰に、金が大量に含まれているんです」。施設内は曲がりくねったパイプで埋め尽くされ、さながら工場。長野県諏訪建設事務所の小松英雄さん(40)が指さしたのは、汚泥を焼却、さらに高温で溶かす際に出る灰を通す直径数十センチの配管だ。
灰には1トン当たり1890グラムの金が含まれ、特に灰を処理する配管にこびり付いた塊には1トン当たり6~22キロもの金が含まれる。長野県は2008年度、回収した金で4千万円もの売却益を手にした。
07年、有効利用ができないかと汚泥を分析した際、金が見つかったことが契機だった。「黒鉱ベルト」と呼ばれる貴金属を多く含む地層から金が下水道に溶け出したり、周辺に


多い精密機械工場で基板などに使った金メッキの排水が流れ込んだとみられる。小松さんは「汚泥は地球からの贈り物ではないか。今後も売却益を施設の運営費に充てたい」とほくほく顔だ。
諏訪市の下水道の金は一部の専門家には知られていた。日本下水道事業団の村上孝雄(むらかみ・たかお)技術開発部長(56)は1988年秋、建設省土木研究所(茨城県)で主任研究員をしていた際、諏訪市の汚泥の金に注目、「事業化できるのでは」と奔走した。しかし、当時は金価格が1グラム1800円程度で採算割れする恐れがあったため断念した経緯がある。その後、金価格は急騰し07年以降は1グラム3千円前後で、長野県は“一獲千金”にこぎ着けた。
村上部長は、他の地域の下水道でも金などの貴金属が多量に見つかる可能性はあると指摘する。「汚泥に銀やプラチナが含まれていることもある。下水道は一種の都市鉱山だ」と夢を描く。
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下水にあるのは貴金属だけではない。DNA成分として肥
料に不可欠でありながら、鉱石の枯渇が危惧(きぐ)されているリンも注目を集めている。植物に吸収され、食品を通じ
て人間の体内に入り、下水に流れ込むリンは海や川、湖の水質汚濁を引き起こしている。回収は、リサイクルと環境保全の両面で有効だ。
国土交通省は下水汚泥からリン回収を進めるため、今年1月に関係者の検討会を設置。岐阜市は本年度中に年間約500トンのリン酸塩を回収できるプラントを市内に建設、来春から生産を開始する。東京都も本年度からリンの回収実験に取り組む予定だ。
国交省によると、全国の家庭やオフィスなどから出る汚泥の7割は建設資材原料などとして何らかの利用がなされているが、3割はそのまま埋め立てられている。大阪市立大の貫上佳則(かんじょう・よしのり)教授(都市リサイクル工学)は汚泥の再利用について「資源回収だけでなく、都市環境の再生にもつながる」と期待している。
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地球温暖化が自然に牙をむき大量生産・大量消費の時代は曲がり角を迎えた。捨てられていたものに価値を発見するリサイクル最前線を見た。(田井誠共同通信記者)


