「白人でも黒人でもなく、金持ちでも貧者でもなく、共和党でも民主党でもない、一つの米国をつくろう」。二〇〇四年の民主党大会でこう演説し、脚光を浴びたオバマ氏は、今回の大統領選でも「ユナイト(融合)」の重要性を繰り返し説いた。米社会が抱える矛盾と対立はそれだけ根深く、「オバマの変革」に暗い影を落とす。
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「黒人に対する憎悪犯罪(ヘイトクライム)が増えるのではと心配だ」。一九五〇年代から六〇年代に全米で燃え盛った、黒人差別撤廃を求める公民権運動。その発祥の地、南部アラバマ州モントゴメリーで、人種差別を監視するインテリジェンス・リポート誌のポトック編集長は言う。
同誌によると、白人至上主義者やネオナチなどの団体はブッシュ政権時代に40%増加、現在全米で八百を超える。移民排斥を訴え、ヒスパニックを主な標的にしてきたが、オバマ大統領誕生で照準を再び黒人に向ける可能性があるという。
「オバマが大統領になれば、白人は奪われたものに気付き行動を起こすだろう」(ネオナチのウェブサイト)。「白人のキリスト教徒の国が乗っ取られるという危機感が根底にある」とポトック編集長は指摘する。
オバマ氏が勝利した日、白人が多いモントゴメリー市の中心部は静まり返っていた。白人女性のジョアナ・セルマさん(28)は「黒人大統領なんて早すぎる、ひどい時代が始まる、と親の世代は言う」と戸惑うが、オバマ氏への拒絶反応を示すのは、人種偏見が根強い南部にとどまらない。
中西部ウィスコンシン州エルロイ。人口約千五百人、酪農を営む白人の町だ。金融危機は波及せず、教会に通い、家畜を育て、狩りを楽しむ人々の生活は何十年も変わらない。大統領選では、大多数が共和党のマケイン氏に投票したという。
「妊娠中絶、銃規制、政府の介入に反対だ。オバマ政権で国が社会主義に傾き、築いた資本が削られるのではと不

安。米国本来の生活様式を維持したい」と、町の銀行家(54)は話す。
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オバマ氏が住むシカゴ南部のハイドパークは、米国の矛盾を象徴するような地域だ。シカゴ大学の周辺は知識人や富裕層の高級住宅街。その外側は黒人が多く治安の悪い貧民街だ。高級住宅街にあるオバマ氏の私邸周辺にはパトカーが配備され、部外者は近づけない。
日系人の音楽家、クララ・タカラベさん(33)は貧民街で暮らす黒人の姉弟を里子にしている。姉弟の両親は麻薬中毒、「食事は二日前のハンバーガーが最後」という極貧。「オバマは私たちの一員じゃない。私たちの生活を知らないもの」と姉は淡々と語ったという。「貧困層は彼の視野にない。でもシカゴでは、オバマの批判はタブーなの。そんなのおかしくない?」とタカラベさん。
人々を隔てる亀裂は想像以上に深い。だが、オバマ氏勝利の原動力になったシカゴの学生たちは、「変革」実現のためにやるべきことをわきまえているようだった。「オバマはいつも言うんです。『行動を起こしてほしい。イエス・ウィ・キャン(できるさ)』と」(舟越美夏共同記者)

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建国以来、黒人を奴隷として使ってきた米国では、多くの州で白人と黒人の結婚が違法とされるなど、一九六〇年代まで制度上の人種差別が存在した。白人至上主義団体クー・クラックス・クラン(KKK)などは公民権運動の黒人活動家誘拐や殺害に加担したとされる。オバマ氏の当選後、黒人が白人に襲撃されたり、オバマ氏の人形が木につるされたりする事件が全米で増加している。


