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連載企画

岐路の憲法

第2部「わたしの視点」

(6) 改正せず、広めよう 「守る」から戦争始まる  作家の半藤一利さん

(6) 改正せず、広めよう 「守る」から戦争始まる  作家の半藤一利さん

 自民党は「憲法を改正して国防軍をつくり、日本を守る」と言うが、私はむしろ9条を世界に広めた方が人類のためによいと思っている。昭和史を研究して軍隊はいかなるものかを勉強した結果、軍隊を持つ方が危険だと思うからだ。自衛隊は「攻めてこられたら抵抗する」という意思表示のための存在でよいのではないか。
 軍事の古典とされるクラウゼビッツの「戦争論」は「戦争は攻めることではなく、守ることから始まる」と書いている。旧日本軍の哲学はまさに「攻撃は最大の防御」。満州事変も真珠湾攻撃も「自衛のため」だった。日本の軍隊は「国を守る」と言いながら、進んで外に出て戦ってしまうものだ。軍隊の「ぐ」の字も知らない人が国防軍だなんて、非常に危険だ。9条でちゃんと縛っておいた方が安全で、国民のためになる。
 9条を変えたい人は戦争体験のない人が多いのではないか。私は東京大空襲を体験し子どもや女性、老人の死体をたくさん見ている。それを考えると戦後、戦争で1人も人を殺していない、日本人が1人も死んでいないことは素晴らしい。もっと誇ってよいと思う。最近、戦場に人を送らないのが悪いかのように言われることもあるのが不思議でならない。
 憲法も9条も、連合国軍総司令部(GHQ)による押し付けだと改憲派は主張するが、強引すぎる。確かに憲法の草案を作ったのはGHQだが、受け取った日本側は、民主主義に基づく戦後第1回の総選挙で選ばれた国会議員が討議して練り上げ、いくつもの修正を経て完成させた。本気で侵略はもうしないと誓い、平和国家をつくろうとした。
 9条についても、さまざまな資料を分析すると、マッカーサー最高司令官はGHQに草案作成を指示する直前の1946年1月、幣原喜重郎首相と3時間会談しており、その際、幣原首相の方から提案した可能性が高いと私はみている。幣原氏は28年のパリ不戦条約で苦労して日本の批准にこぎつけた経験がある。この条約と9条はほぼ同趣旨で文言も似ており、原点になったのだと思う。
 日本人はそれほどばかじゃない。戦争や終戦直後の飢餓を体験しているじいさん、ばあさんが生きているうちはそう簡単に9条は変えさせないと思う。じじいの私はそれほど悲観してはいない。
 地方分権や教育で改めるべき点があるとか、人権や環境権のような新しい権利を加える必要があるといった主張もあるが、法律をつくることで解決する。憲法改正の必要はない。
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 はんどう・かずとし 30年東京生まれ。文芸春秋で月刊文芸春秋編集長や専務取締役を歴任。著書に「昭和史」「日本国憲法の二〇〇日」など。


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