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遠隔地医療も開始します! 山奥のサイバー都市・福島県檜枝岐村

2012/12/27/ 15:06

 檜枝岐村は福島県の西南端に位置する人口602人の村だ。そんな山深い小さな村に、いま全戸に光ファイバー網を使ったテレビ電話が導入され、地域の回覧板、買い物支援に使われている。さらに2013年1月からはこの通信網を遠隔地医療にも利用する。檜枝岐村が取り組む「情報通信技術(ICT)を利用した村民の暮らしの向上」について調べた。(47行政ジャーナル・畠山由美)


実証実験地に選ばれるまで



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福島県檜枝岐村の集落 新潟県と群馬県に接する、面積の98%が林野という山深い村だ。役場を中心とした約2kmの上下流域に集落が集中。205世帯約602人が住む(2012年12月現在、檜枝岐村提供)


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日本経団連の「未来都市モデルプロジェクト」
福島医療ケアサービス都市

場所 福島県地域
実施主体 檜枝岐村、東日本電信電話他


・ 病院や診療所間等で患者情報を共有し、地域一体型の診療体制を実現する。

・ テレビ電話等情報端末を利用した遠隔での健康相談・診療を行う。

・ 救急搬送時の患者情報の共有、ICTによる子育て支援等を行う。




一般サービスの光ファイバー網が普及していた理由-総務課長の星明彦さん

 地域の情報基盤を整備するために光ファイバー網が必要だった。補助金を使った敷設をするには、村の予算が足りなかった。そのため費用を幹線から各戸への引き込み費用を各世帯が負担するNTTの一般サービスを導入した。幹線敷設はNTTが負担した。

 村は205世帯中50近くが旅館・民宿ということもあり、ホームページ開設などを呼びかけた結果、2004年には世帯加入率が50%を超えた。現在は打ち切ったが、村も月額利用料に助成金を出した。

 そんななかで実証実験地の話が来たので、全戸導入を決めた。まだ光ファイバーが通ってない世帯の敷設費は村が負担。月額使用料は各戸が負担する形になった。




年表・檜枝岐村のICT導入

2011年7月 歩数計、体重計、血圧計を配布、測定 集会所モデル開始 保健センターや公衆浴場に設置

    11月 テレビ電話工事開始

2012年3月 全世帯にテレビ電話を設置

    4月~実証実験開始

2013年1月~遠隔地医療実験開始


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保健センターで係員にやり方を教わりながら血圧のデータを登録する村民、檜枝岐村提供


 檜枝岐村は、2011年に日本経団連の「未来都市モデルプロジェクト」の介護医療分野「福島医療ケアサービス都市」の実証実験地に選定された。経団連やNTT東日本の協力により、2011~2013年度の期限で実施中だ。

 檜枝岐村での実証実験に携わっているNTT東日本-福島・法人営業部の石田秀樹さんに、檜枝岐村を候補地に選んだ理由を聞いた。

 「どこでICTを利用した遠隔地医療・介護を提供できるかと考えたときに、一般サービスの光ファイバー網の普及率が50%を超えていた檜枝岐村なら広められるのかなと思った」

 過疎地の光ファイバー網は通常、国の補助事業として敷設し、(一般サービスと違って)村内だけの閉じたものになってしまう。それでは(外部の)インターネットが使えない。

 遠隔地の医者とテレビ電話で話せるのは、檜枝岐村がインターネットも使える一般サービスを導入していたからだ。

 檜枝岐村を選んだ別の理由は、村が福島の一番端で、病院からも遠く、地域中核病院まで50キロあったこと。

 「時間と距離をなんとか克服したいと思っていた。提案したところ、村も歓迎してくれた」

 提案を受け入れた檜枝岐村の星明彦総務課長は「今後さらに高齢化が進み、独居老人も増加、通院が困難になることが予想される。この問題を解決したかった」と語る。

 その後も村とNTTは、必要な施設などを検討し、2011年3月に実証実験地に選定された。


テレビ電話を使った取り組み

 2012年4月から、村民に端末に慣れてもらうため、以下のような取り組みがされている。

防災情報の発信 テレビ電話で行政防災情報を送信。光ケーブルが断線した場合に備え小型無線機で補完している。

電子回覧板 村から住民に情報を伝える回覧板。運動会の動画や保育園のお遊戯会の動画も配信し、住民の親近感を強めている。

買い物支援 村唯一の生鮮食料品店「JAストア」との提携し、住民はテレビ電話で品物を注文できる。電子チラシを表示して画面をタッチして注文すれば、JAストアが配達してくれる。

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JAストアのお買い物画面(檜枝岐村提供)

 もともと檜枝岐村のJAストアは電話で注文があれば、配達をしており、これをテレビ電話で行うスタイルに切り替えた。現在通話は有料だが、2013年6月28日からは、JAストアの負担で通話ができる。

健康支援 村民に万歩計・体重計・血圧計を配布して、テレビ電話を使いデータを送信。保健センターで集計し、健康への意識を高める。


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・データをグラフにしたり、順位を付けることで励みになる
・診療所の医師も参考にできるので健康相談で利用する
・保健センター以外にも村営温泉、公民館でもデータを入力できる

健康相談 村の保健師が住民にテレビ電話を掛けて、健康診断の結果を見ながらアドバイスする。最近では村民がテレビ電話に慣れてきたので、村民の方から掛けてくることもある。

在宅再診 村診療所の医師が「○○さん、最近診療所に来てないね」と思ったら、医師が電話して、テレビ電話を通じ具合をたずねる。正確には診察ではなく、見守りのひとつ。


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テレビ電話を通じて診療所医師(左)と話す村民(右)、檜枝岐村提供




遠隔地医療も始動

 村では2013年1月からの遠隔地医療の実証実験開始にむけ、さまざまな準備をしている。
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檜枝岐村の現状

心臓に治療が必要な状態になった場合は…

村(A地点)から50キロ離れた県立病院(B地点)で応急手当て → さらに50キロ移動して専門病院(C地点)に行く


大きな地図で見る

: 檜枝岐村
: 福島県立南会津病院(約50㎞)
: 会津若松市の民間専門病院(約100㎞)
: 福島県立医科大学附属病院(約130㎞)


 

 現段階では法律規制で、遠隔地の医師はテレビ電話を通じ直接患者を診察することはできない。しかし上図のように、テレビ電話の相手先が医師なら診察は可能だ。患者は村の診療所に行き、医師同士がテレビ電話を通じて意見交換しながら診察することになる。

 血液検査、心電図のデータは村の診療所から送信。電子聴診器を用いた心音の送信も可能だ。

 村はこれまでに診療所や村外の医療機関にテレビ電話を設置してもらった。現在は機器の調整段階だ。

 村では現在20数人が心臓血管外科の病院に100kmの道のりを通っている。しかし1月からテレビ電話のテストが始まれば、村にいながら専門医の診察を受けられる。そして病状に変化がなければ、診療所で投薬も受けられる。

 また、ちょっとした異常でも診療所に相談、専門医に連絡できるので、悪化を防ぐ効果もある。

 ただ遠隔地医療の対象は、慢性疾患の再診で状態が安定している患者だ。



教育にも応用

 「未来都市モデルプロジェクト」が開始された2012年4月、村は小学校3年生以上と中学生にタブレット端末を配布した。端末には電子教科書が入っており、学校や家庭学習に活用している。

 さらにネット接続した電子黒板も設置。分度器を出して角度を測る、定規を出して線を引く、形を重ねるなどの操作を教師と子供たちが自由に行っている。
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電子黒板を使った授業の様子 檜枝岐村提供


老いても自宅に住むために

 檜枝岐村は、テレビ電話を使った高齢者の“見守り”をどう実現できるか、各世帯から24時間体制で医療福祉センターへのナースコールが発信できないか、なども検討している。今後、檜枝岐村では高齢化が進行していく見込みだが、多くの高齢者は施設ではなく自宅に住み続けることを希望している。高齢者の願いを実現するためにICTをどう利用できるか村はアイデアをひねっている。

 「檜枝岐村は奥まったへんぴな村だけど、ICTを利用してなんとか住民の暮らしが向上すればいいと思っています」と星総務課長は締めくくった。
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