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SNSは自治を変えることができるのか 日本フェイスブック学会から

2012/11/28/ 16:45

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 フェイスブックを開設する自治体が相次ぐ中、動きの先駆けとなった佐賀県武雄市で「地方自治2.0」をテーマにした第2回フェイスブック学会が11月16日から18日まで開催された。

 フェイスブックによって地方自治が「(バージョン)1.0」や「1.5」から進化するのではないかという思いで参加した人々は延べ500人遠くは沖縄・石垣島からも。

 「学会」と銘打ってはいるが、研究者だけでなく、各地の自治体職員や、地域づくりに興味を持つ市民の、フェイスブックなどソーシャルネットワーキングサービス(SNS)活用をめぐる活発な発言が目立った。現地取材と、USTREAM(ユーストリーム)の会場中継からキーワードを拾った。
(47行政ジャーナル・橋田欣典)


▽基本的に不都合な文書はない

 学会のトップは、市立図書館へのTカード導入などで注目を集める武雄市の樋渡啓祐市長。2013年4月から行政文書をウェブ上に移し、情報公開請求をしなくても閲覧できるようにすると初日の会場で発表、出席者を驚かせた。「行政文書には基本的に都合の悪いものはない。相手があるもの、個人情報があるもの、著作権がこちらにないものは出さない。アーカイブの機能と、現在進行中でも公開できる文書は出す」と説明。クラウド利用で、災害時の文書消失を防ぐ機能も強調した。情報蓄積システムとしてEvernote(エバーノート)を活用する。



▽ものづくりに活かす

 武雄市は昨年8月、全国で初めて公式ホームページをフェイスブックに移行。樋渡市長は「市民に職員の顔が分かる。また災害現場の写真など、市民が気付いたことを投稿してみなさんに知らせることもできる」と効果を語った。同市は「FB良品」の看板でフェイスブック上に地域産品の通販サイトも開設。「見てもらうだけではもったいないと思って始めたところ、地元の商品が売れるようになった。現実の世界でちゃんとやっていることが反映された」と分析する。

 初日のトークで、星合隆成・崇城大学情報学部教授は、ものづくりを通じて地域社会を構築し、その物語をブランドにして売り出す「地域コミュニティブランド」の考え方を説明。提唱者として群馬県桐生市で織物のまちづくりを進めた実践例を示し「草の根運動で得た共感を可視化し発信する」ことの重要性を強調した。


▽スピード、わかりやすさ、写真

 2日目の注目イベントは、地域で実際にフェイスブックづくりに取り組む担当者のトークセッションだった。東日本大震災で大きな被害を受けた岩手県陸前高田市に武雄市から出向している古賀龍一郎さんは、陸前高田市が運営するフェイスブックを通じて、復興への取り組みを外部に発信する一方で住民には行政情報を届ける、という活動の中心となっている。「一番大切なのはスピード、そしてわかりやすさ。リアルタイムで、文章は少なくして写真を」と、経験から得たノウハウを説明した。

 山形県鶴岡市役所から出羽商工会に出向、ソーシャルメディア研究会を立ち上げてフェイスブックなどSNSでの情報発信に取り組んでいる本間真弓さんは「ITのスキルで地域の役に立ちたいという人々が集まっている。7月に庄内のイベントをやったが3日間に全国の10万人がサイトを閲覧してくれた」と報告。ネットの縁からリアルに人々がつながっていくことが財産と指摘した。


▽売れるのは人と風景を伝えられるようになってから

 ネットを通じた物産販売も話題の中心に。福岡県大刀洗町役場は7軒の農家が野菜14種類を詰め合わせ、町のフェイスブックを利用して送料込みの2980円でネット販売している。サイトのデザインは役場がやっており、農家が支払う利用料は売り上げの5%で民間業者に比べて格安という。大刀洗町役場の村田まみさんは「農家のお母さんたちがグループになって野菜を売ることを楽しいと言っている」と事業が定着しつつある様子を語った。

 武雄市役所でフェイスブックを担当している古賀敬弘さんは「伝統工芸品はPRが難しい。触ってみなければよさが分からない」と苦労を明かす。「売れるようになったのはつくっている人の顔、まわりの風景、人となりを伝えられるような形ができるようになってから」と話し、ネット上で心のつながりを結ぶことの大切さを訴えた。


▽自治体からやって見せる

 最終日の18日には鼎談「地方自治2.0」と題して、東浩紀さん(作家・批評家)、松原聡さん(東洋大教授)、樋渡市長のトークが行われた。樋渡市長は「ぼくらが2.0と言っているのは、前にあったものをぶちこわしてまったく違うことをやるのではなく、今ある1.0や1.5に足して付加価値を付けること。それが基本的な行政の在り方だ。そして主力としてフェイスブックがある」とみずからのスタンスを説明した。

 東さんは「地方自治の1.0は代表が密室でものを決める段階。2.0は選挙で代表を選ぶけれど、ソーシャルネットワークでフィードバックし、監視するゆるやかなシステムと考えている」と述べた。そして「武雄市のような規模の自治体では(SNSで)市民の声を個別に拾い上げることができるが、東京や国になるとそれは難しい。統計などを組み合わせて人々の反応を得る方法もある」とした。

 一方、松原さんは個々の自治体のSNSを使った取り組みに注目。「いろいろなことをやって見せていくことが大事だ。市民の声ひとつひとつを聞いて議論し、日本全国にものをいえるようになる。そんな自治体が勝っていけばいい。自治体が動きやすくなり、日本全体がうまくいけば」と、SNSが地方から行政を変えていくきっかけになるという考えを示した。


▽リアルな人のつながりへ

 日本フェイスブック学会の締めは、戸羽太・岩手県陸前高田市長、高久勝・栃木県那須町長、樋渡市長によるトークセッション。戸羽市長は「震災から1年8カ月経ったが、復興にはまだまだ程遠く、現実は入り口に立てるかどうかというところ。一方、被災地のことはメディアが取り上げなくなると忘れられていく。だからフェイスブックで情報を出す。一本松の募金もした。各地で講演をするとフェイスブックの〝友達〟が来てくれて、リアルに人と人がつながっていき、気持ちの共有が心の支えになる。人は誰かに見ていてもらえなければ絶対にがんばれない」と語った。

 また高久町長は、東日本大震災で「福島の被災者を那須町で受け入れると真っ先に表明したらネットで伝わり、多くの人がやってきた。SNSは災害に強い」と指摘した。また観光地、別荘地である那須町の特徴として首都圏からの移住者が住民の半数を占め、多くが自治会に加入していない現状で、SNSを使った情報発信が大いに役立っているとし、特産品の売り込みにもフェイスブックを活用していく考えを示した。


▽実験しないと進まない

 学会の長い日程から特にフェイスブックに関係する部分をピックアップして紹介した。発言者の話題は多岐にわたり、SNSから遠く離れてしまうこともしばしば。ただ一見「拡散」しているように見える地域づくりのトークが、人と人をつなぐネットワークづくりの部分でSNSへの期待に帰ってくることが印象に残った。「早く声を上げると、それだけスピードをもって広がる」「小さくてもいいからまずやってみよう。そういう実験をやっていかないとこの国は何も進まない」と樋渡市長は繰り返し強調する。実践が全国の自治体に広がる中で、どのような効果、問題点が浮かび上がるのか。地方自治に欠かせないツールとなり始めたSNSの在り方をしっかり考える必要性を痛感させられる議論だった。

 
<東京ビッグサイトにFB良品登場>

 11月27、28日に東京ビッグサイトで開かれた第26回東京ビジネスサミット2012に、武雄市の「FB良品」が出展、特別賞を受賞した。FB良品は2011年11月にオープンした、市によると「自治体初の特産品等を扱う通信販売ページ」だ。武雄市のフェイスブックページの中に開設され、出店料不要、販売手数料は5%と安価なことが特徴という。岩手県陸前高田市、栃木県那須町などとも連携しており、今後は全国の自治体からの特産品販売のプラットフォームとして、地域所得の向上につなげることを目指している。




 会場で武雄市の取り組みを説明していた市職員の福田史子さんは「市長からはいい商品をピックアップするように言われている。それが売れると、まわりの人もいいものをつくろうとする」と話す。「FB良品に出すと住民が元気になる。商品を紹介すると買ってもらえる。そして全国の人とつながっていく。〝人の役に立つ〟という公務員の仕事の本質にもつながります」と意気込んでいた。


(47行政ジャーナル・橋田欣典)
 
 

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