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情報紙から見た震災復興2年目の展望 『東北復興新聞』発行・NPO法人HUG代表 本間勇輝

2012/05/29/ 18:13

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 筆者は今年1月から『東北復興新聞』という新聞を発行している。「復興に携わる人向けの業界新聞」と位置づけ、月に2回、震災復興に関するトピックだけを扱い、あえて紙で発行している(WEB版:http://www.rise-tohoku.jp/)。

 震災後、各地域でフリーペーパー等のローカルメディアが誕生したが、東北3県すべてをカバーし、さらにまちづくり、漁業、農業、原発、医療など横断的なトピックを扱うメディアは少ない。そこで私たちは被災自治体、復興庁をはじめとする中央官庁、NPO等の活動団体、被災事業者や自治会、他地域の支援企業や支援団体などに、エリアやテーマを横断した新たなメディアとして東北復興新聞から情報発信している。彼らを「復興業界」とくくりながら復興関係者の情報連携や提携を促進したいと考えている。

 東北復興新聞の発行は、数名のメンバーを中心に、東北で活動する復興支援団体やライター、東京のプロボノ(職能を生かすボランティア)チームの協力のもとで行っている。購読は無料。発行の趣旨に賛同をいただいた個人サポーター(年額8,000円)および企業パートナー(月額30,000円~)からの寄付で運営資金を捻出している

 

復興のベストプラクティスを共有


 東北復興新聞は、行政関連のニュースから復興を支える人々のコラム「復興のキラ星」といった現場感のある記事まで幅広く掲載している。一番のポイントとしているのは「良き事例(=ベストプラクティス)の共有」だ。仮設住宅の運営、街づくりにおける合意形成、漁業の6次産業化等、今回の震災で被害を受けた地域は広範囲にわたる。各地域で取り組む課題に共通点は多い。しかし一方で、隣の町や市で行われている素晴らしい取り組みについて何も知らなかったりする事が多いのだ。そこで素晴らしい取り組みを発掘し、毎号1つピックアップし、特集として見開き2ページの記事にしている。結果だけでなく「まねできるようなノウハウ情報」を目指し、記事づくりを行っている。創刊号から最新の9号まで様々なジャンルの特集を組んできたが、幸いにも多くの方々からご好評頂いている。

 このような新聞の取材、編集を通じ、多くの話を聞いて来た筆者として、これからの復興に必要なものや考え方について、僭越ながら考察したいと思う。

 

外部の支援から地元主体の復興へ


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岩手県釜石の保育園を取材する様子

 5月18日、全閣僚で構成される復興推進会議が首相官邸で行われた。復興庁が公開している資料を見ると、ライフラインの復旧等のインフラ面や、住宅や義援金、心のケア等の被災者の生活面、産業・雇用面や原子力災害関連などにおいて、震災後およそ1年の進捗がおおまかに分かる。多くのメディアは、がれき処理の遅れや復興庁の実行力に対する厳しい評価を報道していたが、阪神淡路や中越の時とは比較にならないほど広範囲に渡って対応が必要だったこと、そしてこれからも必要であることをまず認識した上で、批判だけでなく前向きなマインドを持って今後の復興について考えていきたい。

 復興2年目にあたるこれから1年で必要なものは何か。その理解のために、まずは現状を理解する必要がある。

 震災直後の緊急支援から仮設住宅への入居や復興商店街等の開設、インフラ面の復旧作業等、多くの変化が起きた1年目。比較して2年目は一連の復旧作業も一服して、目に見える変化が少ない。「復旧と復興の踊り場」と阪神淡路大震災からの復興に携わってきた人々は言う。こうした中、見えないところで起きている状況変化を認識しつつ、復興の状況を見ていくことが大切だろう。

 プレイヤーという意味では、外部からの支援者が活躍しメディア等の注目も集めた1年目に対して、これからの主役は間違いなく被災地の住民や事業者となる。緊急支援期に活躍した多くの支援団体は1年の区切りで支援を休止しており、現在継続して活動している団体は被災者に「与える」支援ではなく、地元自治体や住民と対話をしながら「横から支える」支援をしていると言える。現地のNPOや事業者に対して「右腕」として被災地外から人材を派遣する活動をしているNPO法人ETIC.や、東北3県それぞれで発足したアセスメントや情報提供等により現地の団体や地元行政の連携を促進する「連携復興センターどがその代表例だ。

また外部の関わりも変化している。例えば被災地の商品を買って支援する、いわゆる「応援消費」が減少傾向にあるという調査結果がある。地元中心の地道な復興フェーズに入りメディア報道も減っていくことが容易に想像される中、ますます被災地はその本質的な価値を問われていくことになる。

東北復興新聞9号「オピニオン」では、「ビジネス視点で復興を。東北に必要なのは慈善ではなく投資だ」といった寄稿を頂いたが、これも2年目ならではの考え方と言えるだろう。

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無料配布の東北復興新聞を手にとって読むひと

 もう1つの重要な視点に「復興格差」が挙げられる。筆者も取材の場で多くの方々と話す機会があるが「被災地」「漁業者」「仮設住宅の住人」といった言葉で、一律に今の東北を理解しようとするのは間違いと断言できる。同じ漁業者の中でも、外部の支援者たちの力を借りながら新たなチャレンジに取り組む人々のすぐ横で、未だに再建の1歩を歩みだせない人々もいる。メディアに多く登場するのは前者だが、その数倍の数の後者が存在することをまず理解する必要がある。こうした中、リーダーを育てていく施策も、ボトムアップ施策も同様に必要であり、施策や取り組みに1つの正解はないと言えるだろう。どこかの1面をとらえてネガティブな批判をするのではなく、被災地や復興現場の多様な側面を理解しながら、様々な施策やプレイヤーが並行しながらも、全体として復興という大きな方向性を目指し、連携しながら共に進んで行くことが重要だと考える。

 

合意形成を生む「場作り」を


 主役が支援者から地域へと移行する中、これからの本格復興へ向けた長い道のりにおいてポイントとなるのは、「行政・住民の合意形成」と考える。インフラ復旧の目処がたったいま、乗り越える課題は被災者の生活支援や高台移転、ハコもの整備だけに留まらない新たな街づくり、そして産業再生など、ソフト面での取り組みが中心となる。これらの課題解決へむけては、各地域の中でいかに行政と住民を含む関係者の合意形成がなされ、足並みをそろえられるかが焦点となる。まず基礎となる地域コミュニティが形成されていることが重要だ。1000人、2000人程度の、顔が見え、住民がアイデンティティを感じられる地域コミュニティが存在して初めて住民の主体的な参加を促し、具体的な意見を吸い上げることができる。その上で行政等の関係者と、有効な対話をすることができるようになるのだ。

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ほんま・ゆうき 1978年生まれ、東京都出身。立教大卒。富士通に入社後、2005年に(株)ロケーションバリューを創業、同社取締役COO。2009年に同社退社後、妻と2年間世界中をまわり、旅先で実施した社会貢献活動「ソーシャルトラベル」が話題になる。2011年10月帰国の後、NPO法人HUGを創業。『東北復興新聞』発行および東北の事業者・団体の情報発信支援を行うとともに、インド、アフリカ、ハワイへの新たな旅のスタイルを提案している。2012年9月にソーシャルトラベルに関する書籍を発刊予定。

 合意形成においてポイントとなるのが「住民vs行政」という対立構造とならないようにする場づくりだ。これは過去の災害復興の事例からも見る事ができる。阪神淡路大震災の際に復興の中核を担ったのは、100を超える数が設立されたという「まちづくり協議会」という対話の場だった。また7年前の福岡県西方沖地震で壊滅的な被害を受け全島避難となりつつも、3年と言う異例のスピード復興を遂げた福岡市の玄海島でも、同じような場が「復興対策検討委員会」という名で持たれていた。いずれの場合も、自治会や商工会/漁協、婦人会などの代表者が、行政と住民の間に立つ第3の役割として存在したことで、その場が有効に機能した。この経験は、今回の復興においても留意すべきではないだろうか。

 今回の震災復興における対話の場づくりの好事例としては、福島県浪江町が挙げられる(東北復興新聞8号特集)。同町の復興ビジョン策定において町役場がとったスタンスは、徹底して町の存在感を感じさせない形での住民意見を吸い上げる方法だった。策定の委員会の全体人数のうち役場職員は10%に満たない人数とするとともに、ファシリテーション(議論の進行、まとめ)も外部の有識者が行った。またこうした会議の場では行政側がたたき台を出し、住民が意見するかたちが通常だが、たたき台を出すのではなく町民に自由に意見を出してもらい、町はそれを整理しまとめる役に徹するといったプロセスの工夫もあった。各地域やコミュニティによって特性や環境は当然異なるだろうが、合意形成はこうしたひとつ一つの努力の先にあるものなのだろう。

 多くの場合、行政は批判の対象となるが、筆者が共に活動する復興関係者の多くは「行政批判は思考停止のワード。いかに行政をエンパワーメントして各施策を前に進められるかを考える必要がある」と口を揃える。筆者も同感である。一方、行政側には、既存の枠やルールにしばられ過ぎない柔軟な対応が求められているが、それを実現するのは個人の力なのかもしれない。例えば上述の福島県浪江町で復興ビジョン作成を支えた同町復興推進課の玉川氏は、FACEBOOKなどを活用し、関係者とのコミュニケーションや外部への情報発信をしながら信頼を獲得し、住民意見を取り入れた復興ビジョン実現に大きく寄与した。「行政」とひとくくりにしないで、こうした個人個人にも注目しながら復興を後押していくべきだろう。

 地域が主役となる2年目以降の復興。そしてキーとなる地域コミュニティと対話の場づくり。未だ課題は山積し、果てしなく長く険しい復興の道のりだが、答えは足元にしか無いと言えるのだろう。東北復興新聞においても、聞こえの良い言葉や目立つトピックにとらわれることなく、現地の合意形成に寄与するような好事例をピックアップして復興関係者に発信していきたいと思う。

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